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伊本貴士 講演会講師インタビュー 後編

2000年、NECソフトに入社。Linuxなどオープンソースのシステム開発に携わる。フューチャーアーキテクトを経て2009年、メディアスケッチ設立。IoT・AI・ブロックチェーンなどの最新技術を使った研究開発を積極的に行う技術コンサルティング会社として、様々な業界の企業との研究開発を行う。また、自身の研究として、犯罪予測AIやスマートホーム向けの無線モジュールの開発などを行う。
2016年、サイバー大学客員講師に就任し、情報端末とネットワーク及びIoTの授業を担当。2019年から専任講師に。

(text:大橋博之、photo:小野綾子)

DXは難しくない。やればいい

──DXの講演も多いのだとか。

 

伊本貴士 DXは厄介な言葉ですよね。DXに正式な定義はありません。メディアも言っていることが違う。

DXは概念です。要はデジタル化しましょうという話。エリック・ストルターマンの論文には、これから企業や人はITを活用しないとダメだけど、ITに振り回されてはいけないと書かれています。ITを目的にしてしまうと逆にITによって無駄な時間を費やすだけになってしまう。役に立たないシステムは作らない方がマシだということです。

じゃあ、何のために我々はデジタル技術を使うのか? それは人生の時間を有効に使うためだとエリック・ストルターマンは言っています。

例えば会議がそうです。集まらなければいけない理由を私に、合理的に説明してくれた人はいません。「寂しいから」という人もいましたが、私は別に寂しくありません。講演のネタとして言っているのは、「会議で実際に人と会って直接しゃべらないといけない理由があるとしたら、それはイラッと来たときにその人を殴れるから」と。それ以外に合理的な理由はありません。

昔だったらWeb会議はできなかったけれど、今は誰でもできるようになった。だからやればいい。コロナ禍で必要に駆られて社会が一気に動いたという背景はありますが、コロナ禍に関係なく、できるものはやればいい。

DXは非常にシンプルなことです。皆さん難しいことを言いますが、全然難しくない。デジタル化して人間が楽になるんだったら、時間の無駄がなくなるんだったらデジタル化すればいいという話です。

さっき言った引き算の話です。導入するのに500万円かかるとして、それで自分たちが楽になる、無駄がなくなる。得か損か? 得だったらやればいいし損だったらやらなきゃいい。それだけの話で悩むことはないんです。

また、DXの講演で質問や相談をされるのは、「DXが何か分かったけれど、自分たちは何をすればいいのかが分からん」と。

 

 

 

伊本貴士 企業のDX担当者というのは、「お前、DXやれ」と言われてやっているんです。命令されて。だから、「何からすればいいのか」と、聞きに来るわけです。

デジタル化は無駄な時間をなくすためにやるんだけど、現場では無駄だとは思ってないんです。

 

──無駄だという認識がないんですね。

 

伊本貴士 しかも、「デジタル化されると自分たちの仕事がなくなる」と思っています。だから協力してくれない。

「いやいや、ロボットを導入したら俺たちの仕事なくなってクビになっちゃうじゃん」みたいな。組織として大きな勘違いをしている。

それに、社長が「DX化しろ」というのが間違い。DX化を何のためにするのかをまず決めないとダメなんです。

これもDXの講演でいつも言うことですが、私は具体的に順序を決めるフレームワークを作っているんです。

まずは課題の把握。組織で今どういった問題があるのかを、とにかく洗い出す。例えば価格や効果、あと実現性。この三つの指標で点数をつける。安くできて効果が高くて実現できるのなら、さっさとやればいいじゃないという話になるじゃないですか。点数を付けて行って一番高いものから優先的にデジタル化していけばいいです。IT企業に任すのなら見積もりを取って、得になるならやればいい。得をしないんだったらやらなければいい。

DXというと、なんか抽象的な概念の説明や方法論に終始している話が多い。企業には、「周りがDXと騒ぎ始めたから、うちもIT化の波に遅れている」という悩みがあって、「今だったらDXという波に乗れる」という、曖昧な動機から始まっているんです。

あるところから相談があって、「上司から業務の70%をDX化するようにと言われた。でも、どうやっていいかわからない」と相談されたことがありました。70%という数字はどこから出てきたの? なんとなく感覚で出てきたんでしょう。そんな数字は達成できるわけがない。

残念ながら私はDXを推進しているけどDX信者ではない。むしろ、デジタル化しない方がいいことも世の中にはいっぱいある。半分ぐらいはデジタル化しなくていいことです。デジタル化すると混乱することはたくさんある。数字ありきDX化ありきで話をするからおかしくなる。もっとシンプルに考えましょうと。

労働者を楽にするか、お客さんに新しい価値を提供するか。このどちらかを目標にして、そのために何をすればいいのかを考える。そのなかに、デジタル化でできるものと、デジタル化しなくてもできることもある。デジタル化しなくてもできることはラッキー。でもどうしてもデジタル化しないとできないこともあります。そこはデジタル化する。DXなんて難しくないです。

 

 

コロナが収まると世界中のものがリセットされる

──コロナ禍によって企業は変化しています。今後、企業は働き方や生産性向上をどうすればよいのでしょうか?

 

伊本貴士 現状の問題を打破するためには、問題の洗い出しを、今のうちにやっておくことです。そこに優先度決めて。コロナ禍でダメージを受ける反面、変革のチャンスでもある。昔なら「Webを会議する」というと「会議室があるのになぜ?」と言われましたが、今なら「OK」となります。そういう意味で変われる、改革派にとっては良い時期です。なので、変更できるところはどんどん改善して行くのが第一です。

とはいえ、私は全ての企業が助かるのは難しいと考えています。かなり淘汰されるでしょう。

講演でもいつも言っているのですが、日本のメディアは海外のことはほとんど報じません。みんなコロナのニュースに頭が行って、メディアからAIの話題はほとんどなくなりました。私の出演もばったりと途絶えました。

テレビが芸能ニュースとコロナに割いている。未来を語る時間がなくなりました。それは非常にまずいと思っています。AIやITの話題が止まっている。世界の最新テクノロジーがどうなっているのかの情報が一般の人に行ってこない。

私は仕事なのでウォッチしていますが、コロナ禍でも、世界は進んでいます。アメリカやヨーロッパもコロナ禍です。しかも日本よりも厳しい状態。だからこそ、デジタル化しないと社会が回らなくなってきている。そこでAIがすごく活用している。

中国の工場もほとんどがDX化されていて、中国の物流工場では人は働いていません。中国人に言わせれば、「日本のラインは、今もみんな並んで作業しているの?」といった感覚です。日本ははっきり言って取り残されています。世界はどんどんデジタル化が進んでいる。大企業も中小企業も今の間に現状を打破し、これからどうするのかを考えて準備しておかないとダメだと思います。

怖いのはコロナ禍が収まったころ、海外企業がやってきて、今までなかったような仕組みを持ち出す可能性があることです。

私は日本にとって一番重要なのは自動車産業だと思っています。5年ぐらい前から、「絶対にEVに移行するからEVの開発をしないとダメだ」と話をしていたのですが、やはり遅れてしまった。テクノロジー的にはテスラが一歩先に行っている。海外ではEVに関する、燃料電池や自動運転、EVに搭載するコンピューター基板の技術が進んでいます。

中国とヨーロッパとアメリカは日本の自動車産業を潰すためにEVに移行し、環境問題という印籠を手に入れて開発しています。これはグローバルで見たとき、絶対に逆らえない流れだと思っています。

日本も遅れてEVになるでしょう。しかし、テスラが頂点で、トヨタでも太刀打ちできない。

今年のダボス会議のテーマが「グレート・リセット」です。世界はコロナが収まったら世界中のあらゆるものをリセットしようとしています。みんな仕切り直して新しい世界を作ろうとしている。

そのとき、日本の企業はどこまでその世界の流れに乗っていけるかを考えておかないといけない。今はまだいいかもしれないけれど、そのときまでに、企業のなかに優秀なエンジニアがいないと、私は絶対にダメだと思います。

 

──企業のデジタル化が遅れているのは、会社内にエンジニアがいないからだと。

 

伊本貴士 そうです。講演で私がいつも言っているのは、経営者がやらないといけないのは教育。特にエンジニアの教育。自社内に優秀なエンジニアを置いて、自社内で開発までできなくとも、設計はできる組織を作ることが急務です。

今、トヨタはIT企業から高額で人材を引き抜いています。それができるの日本では多分、トヨタくらい。普通の企業はそんなことはできない。だから育てるしかない。大企業であっても育てるしかない。

グローバルに見ると日本のレベルは申し訳ないけどはっきり言って低い。日本のレベルではなく、グローバルで通用する高度なエンジニアを、大企業なら10、20人は育てる必要があります。

企業がシステム開発をIT企業にお任せは本当に良くない。これは講演でもよく言っていますが、今まではメールサーバーやWebサーバーといった業務とは切り離されたバックヤードのシステムを作ってきたわけです。でも、フロントヤードの業務に関わるところは、現場を知らないと上手く行かない。IT企業は現場が分からないから「辞めておこう」、となってIT導入が進んで来なかったんです。使えないシステムに膨大な費用をかけてカスタマイズして来たというのが今の日本の現状。

私から言わせると使う必要のないお金をものすごくいっぱい使ってきて、しかも役に立たないというのが今の日本の基幹システム。

その原因は業務をよく分かって、なおかつITのことも分かっているプロジェクトマネージャーとアーキテクトという2人の役割の人が企業にいなかったからです。

だからまずは、そういう人材を作る。要するに企業のITの企画設計ができるチームを作らないといけない。アフターコロナの世界で、世界が大きく変わるときについていけなくなります。

 

──とても理解できます。

 

伊本貴士 私の講演ではIoTやAI、DXといったデジタル活用に関して、どのように取り組めばいいのか、具体的な行動につながるお話をさせていただいています。

事例の話もしますが、他社の事例を聞いただけでは次の行動にはつながりません。他社の事例を紹介しつつも、具体的に自分たちが次に進んで行くためには、こういう手順で、こういうツールを使えばできる、ということが分かっていただけると思います。

私の講演を聞くと、私のコンサルはいらなくなります(笑)。ただ、実際に取り組んでみるとさまざまな困難や問題が出てくるので、そこ初めて私が本業のコンサルとしてアドバイスさせていただきます。

第一歩が踏み出せない企業が多いんです。その第一歩を踏み出すために私の講演を聞いて欲しいと思います。

 

──とても貴重なお話しありがとうございました。

 

 

 

伊本貴士氏インタビュー 前編はこちら

 

 

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