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約10年間、大手接客サービス業で店長やエリアマネージャーを務めた後、2021年に退職し、退職代行サービス「モームリ」を立ち上げた谷本慎二さん。自身のブラック企業での経験をもとに、退職に悩む人々をサポートするために起業した。「辞めたくても辞められない」そんな状況にある人々を救うため、SNSを活用した透明性のあるサービスを展開し、わずか3年で業界のトップランナーへと成長。
退職代行の現状、企業と従業員の“すれ違い”、そして今後の展望について、Speakersに新しく講師として登録された谷本慎二社長に話を伺った。
(text:高田晶子、photo:遠藤貴也)
谷本慎二 私が勤務していた企業は、労働環境がかなり劣悪な会社でした。24時間電話は鳴りやまなくて、寝る時間もないほど忙しく、同僚は次々に辞めていきました。ただし、辞めていった同僚たちは上司に退職の意思を伝えても断られたり、「最低半年は辞められないよ」と言われたりしていたので、退職は難しいものだとずっと思っていたのです。私も「このままこの企業に勤めていても、10年後、20年後が見えないな」と思い、退職しました。私自身の場合は、結構スムーズに辞められましたね。
私が辞めた後に、前職の企業で退職代行が使われたという話を聞いて、「そんなサービスがあるのか」と調べ始めました。ふと、「本当にもう無理だったな……」と自分のことを思い返して、「モームリ」というネーミングがパッと思い浮かんで、自分でやってみようと思い立ち、そのまま起業した形になります。
谷本慎二 そうですね。私が起業する前に確認したところ、100社くらいはありました。調べていくと、会社情報も開示されていないし、代表の写真もない企業ばかり……。どのような手続きを経て退職代行をしているのかもわからないので、ちょっと怪しい、胡散臭いなと思っていたのです。だからこそ、代表の私が顔出しして、会社の透明性も高いと思っていただいて、、SNSなどで内部情報などもすべて出していけば、退職代行需要を囲えるのではないかと思いました。そこで、’22年2月1日に会社登記をして、3月15日には退職代行「モームリ」のサービスを開始しました。
谷本慎二 実は、3月15日のサービス開始当日に、SNSのDMが送られてきて、依頼者が確定したのです。1か月後にはすでに相談が30件ほどあり、かなり順調な滑り出しとなりました。
他社の退職代行のサービスでは、あまりSNSが使われていませんでした。当社は最初からXやInstagram、TikTokを使い、Z世代の子たちがアクセスしやすい状況を作り出しました。少し遅れて、YouTubeで実際の職場風景などの動画を出すことによって、”バズった“のです。若い方はSNSが身近なので、写真や動画付きで「こんな風にやっています」と情報を開示することで、安心感を得られたと思います。
谷本慎二 かなり生きていると思いますね。広告戦略は前職で培われましたし、前職で私は数十店舗の売り上げを管理していた立場だったので、どうすれば利益が上がるかなど、ある程度会社やサービスの認知をしていただいた後の経営にも、前職の経験は生かされています。あと、現在、株式会社アルバトロスには50名以上の従業員がいるのですが、前職の経験がなければ、これだけの部下を統率することはできなかったと思います。そういう意味では、前職には感謝しかないですね。
谷本慎二 依頼者数もどんどん増えていきましたが、SNSを見て、「自分もやりたい」と入社してくれる人も増えました。昨年だけでも、入社希望は恐らく1000人超え。従業員は「自分も前職がブラックで、大変だった」「辛い環境にいたから、退職したいという依頼者の気持ちがわかる」という人が多いですね。
谷本慎二 退職代行は、依頼者の代わりに退職の意思を会社へ伝えるサービスです。それに付随した会社からの貸与物や私物などの引き渡しなどのやり取りも代行します。当社の特徴としては、SNSを活用した透明感、安心感が大きい点が挙げられます。また、他社と比べると、提携サービスがかなり充実しているのも、大きな利点でしょう。例えば、サカイ引っ越しセンターさん、宅配クリーニングのリネットさん、精神面でのケアをするメンタルクリニック、などと提携しており、自社で転職支援もやっています。
今勤めている会社で辛く苦しい思いをしている方は、自分でいろいろなことを調べるのもかなり大変だという状況でしょう。当社に来ていただければ、すべてサポートするというところが、好評の理由かと思います。要は退職に困った時の駆け込み寺のような存在になっているのではないかなと。
谷本慎二 数年前から働き方改革の推進は、方々で叫ばれていますが、いまだにこんなにブラック企業があるのかと驚くことばかりです。クリニック勤務の女性が、院長に後ろから抱きつかれるなどセクハラを受け、退職したいと電話で伝えても「認めない」と言われた。そこで、当社が間に入り、「退職の理由は院長のセクハラです。こんなことがあったんです…」と事細かに説明しなければ、退職できなかったという事例もあります。古い会社もあれば、ベンチャー企業もあります。大手企業だと本社はコンプライアンスをしっかり守るのですが、地方の支店や部署によってはパワハラ気質になっていたりもするので、大手企業勤務の方からも退職代行の依頼はあります。労務実態が劣悪な企業がこんなに多いんだということがすごく印象的ですね。
谷本慎二 先月で言うと、1か月で約2200件です。1日の最高が256件、依頼があったことがあります。依頼者は20~30代の方がボリュームゾーンではありますが、70代の方もいらっしゃいました。
ちなみに、一番依頼が多い時期は、4~7月です。4月に入社したとして、だいたい3か月くらいいたら、労働環境も人間関係も把握できるし、どんな会社なのかがわかりますよね。Z世代を中心とした若者の多くは、給料よりも働きやすさやワークライフバランスを大切にしている人が多いと感じます。自分が属している会社によって、自分の生活やメンタルが脅かされるくらいなら、他の会社に行けばいい。しかも、労働環境が良い会社の情報だけではなく、ブラックな内情などまでSNSで入手することもできてしまいますから。
谷本慎二 「なぜ辞めるか」というデータがすでに2万5千件ほどあり、私はすべてのデータに目を通しています。一番の退職理由がハラスメントや労務関係、それからサービス残業があったり有休が使えなかったりという労働環境、それらを総合すると大体6~7割はそのどちらかになります。
よく経営者から「どうやったら従業員が辞めなくなりますか」と聞かれるのですが、労務関係や労働環境を、法律に則すだけで、意外と退職者は減るものです。有休を本当に取りたいときに取らせてあげる、1分単位で少しでも残業したら、きちんと残業代をつけてあげる、それができている企業が今果たしてどれだけあるのか……。それだけ当たり前のことができていない企業が多いのです。
谷本慎二 そうなんです。頑張っているつもりの企業が一番悩むのは「従業員とのすれ違い」です。実は、企業も従業員も悪くないという案件も多いのです。例えば、企業としては従業員とのコミュニケーションをとるために、定期的に面談を開き、一生懸命相手の声は聞いているつもりでも、実際は企業側から一方的に話をされて、威圧され、それが嫌になって退職するという従業員もいる。企業としては意識して、良かれと思ってやっていたとしても、従業員からするとそれこそが苦痛に感じてしまう。そのすれ違いを、講演会やコンサルティングで私が正していければとも思っています。
谷本慎二 すれ違いの一番の要因としては、管理職の方が今の若い世代のことを知らないということが挙げられます。年配の方は「今の若い奴は」という世代論は昔からずっとあることで、年配の方も自分が若い時には言われてきたはずです。結局時代が違うから、今に合った方針で経営していかないと時代に取り残されてしまい、離職率は下がらないままになってしまいます。
谷本慎二 そう思う人が多いのもわかります。では、今管理職の方だって、自分が若い時に社長など立場が上の人に言われたことに対して、きちんと言い返していたのでしょうか。みんなその立場では言えることと言えないことがあります。キャリアアップなどを見込んで、前向きに退職する人なら自分で退職の意思を伝えることもストレスにはならないかもしれませんが、ハラスメントなどで苦しんでいる従業員が自分で退職の意思を伝えるって、かなり難しいことなんですよ。
谷本慎二 今年1月から「モームリプラス」というサービスを始めました。こうして退職代行のサービスをしていると、いまだにブラック企業も多いし、努力しているつもりでも離職者は減らないという企業も多いことに気付かされました。今までは従業員側のサポートをしてきましたが、このビッグデータを基にすれば企業側にもサポートができると思ったのです。そこで、講演会や企業へのコンサルティング、退職理由などのデータを開示し、その傾向や分析結果をお伝えするというサービスです。
講演会の依頼はもともとあったのですが、改めて打ち出したことでオファーもありました。情報開示の依頼も数十件ありまして、例えば「この会社の内定が取れたのだけど、大丈夫な会社か調べてほしい」「自分が今勤めている会社に長く勤めるのが不安だから、退職代行が使われていないか、教えてほしい」というような依頼がありました。
谷本慎二 あります。1社で最高が98回の退職依頼がありました。その企業は人材派遣会社なので、派遣先がブラック企業だったということもありますが。あと、フランチャイズ業態の企業だと、退職依頼がありがちですね。ちなみに、私の前職の企業も30回以上退職依頼がありました(苦笑)
谷本慎二 現在の退職代行の事業は、あるべき姿ではないと思っているのです。本来なら退職代行をしなくてもいい世の中にしていきたい。ただ、今はこれだけ苦しんでいる方が多いので、どんどん退職代行の認知を広めて、どんどん辞めさせていくことが大事だと思っています。すると、企業が「このままではまずい」と思うはずで、企業の労務関係、労働環境はどんどん良くなっていく。そうすれば、退職代行という業務はなくなっていくと思います。
ただし、どの時代でも、退職にまつわる悩みは尽きないもの。新しく「セルフ退職ムリサポ」という個人の退職をサポートするサービスも始めています。自分では退職できそうにないけれど、退職代行には頼りたくないという人向けに、「モームリ」のノウハウを伝えて、退職コンサルティングをするサービスです。今後はこのサービスに重心を移していければいいなと思っています。
谷本慎二 企業に向けて「離職率を低下させるにはどうしたらいいか」というテーマでお話しすることが一番多いですね。
あと、最近力を入れているのが、大学です。実際に依頼があったのですが、1つは大学のキャリアセンターからの依頼でした。キャリアセンターは大学の教職員が大学生の就職をサポートする部署ですが、企業の選び方を教えてほしいということでした。もう1つは大学生に向けた講演です。当社にはブラック企業のデータもあるので、ブラック企業の見分け方や良い企業の見定め方などをお話ししました。
私には伝えたいことがたくさんありますし、どの立場のどの世代の人にも、参考になる話ばかりだと思います。実際に講演会をすると、多くの方が「私が勤める企業では……」といろいろなお話をしてくださるので、そうしたリアルな実情もお伝えしていきたいと思っています。
谷本慎二 一度、ブラック企業の座談会みたいなことはしてみたいですね。イケイケ社長だけを集めて、討論したら面白いかもしれないですね(笑)
谷本慎二 創業時から当社の業務内容や数字は、絶対に嘘をつかずに透明性を持って実直にやっていくことを徹底してきました。だからこそ、お客様からの信頼も得られて、順調に成長してきたと思います。
当社は「企業と従業員のすれ違いをなくしたい」ということが大きな目標でもあるので、企業側であれ従業員側であれ、それで困っている方々には、当社のデータも知見もどんどん伝えていきたいと思っています。自分が企業向けの講演をすると、何割かの若い人たちは本当につらいんだろうなと思うのがわかります。考えて悩んでいる人ほど、私の言っていることが刺さるのだと思います。そうした人たちのサポートをどんどん積極的にやっていこうと思っています。
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