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パックンマックン 講演会講師インタビュー

アメリカ人のパックン(パトリック・ハーラン)と日本人のマックン(吉田眞)による漫才コンビ。
日米の文化差異をネタにした芸で人気があり、数多くの講演会もこなす。
漫才の傍らワイドショーや情報番組でレポーターやニュース解説なども担当。
そんなお二人に、リモートを活用した講演会の可能性や日本におけるコミュニケーションの課題について伺った。

(text:大橋博之、photo:小野綾子)

コロナ禍でもコミュニケーションの大切さや価値観を共有することは不変

──パックンマックンさんはどのような講演会が多いのですか?

 

パックン 僕らは国際交流、英語、コミュニケーション、金融、おもてなし、アクティブラーニングなどをテーマとした講演会をやっています。

 

マックン 最近では、東京オリンピックや大阪の万国博覧会で、たくさんの外国人が来日することを想定した、外国人とのコミュニケーションをテーマにしていました。なのに、コロナで日本に来てもらえなくなったでしょ。

「国際交流をどんどんして行きましょう」とは言えなくなってしまいました。でも、コロナ禍で、対面で会うコミュニケーションの大切さを改めて実感しましたね。これからも、経験したことや思ったことを伝えて行ければと思っています。

 

パックン 僕らの伝えたいメッセージはコロナでも変わらないと思っています。社会や人間関係の作り方、コミュニケーションの大切さや価値観を共有することは不変。ただ、講演会ができるようになったらいろいろ工夫はしないといけないでしょうね。

 

 

──どのような工夫ですか?

 

パックン 僕たちの講演会はお客さん参加型なんです。まず、お客さんに立ってもらって、後ろの人と握手をしてもらうところからスタートします。その後、5分ほどお互いに自己紹介をしてもらいます。このお客さん同士で会話をするスタイルはどんなテーマの講演会でも同じです。

 

マックン それが僕らの講演会の特徴だからね。「まさか知らない人と話すことになるとは思わなかった。でも、話してみたら楽しかった」という感想が多いんです。

 

パックン コロナを考えるとそれができなくなる。「2m離れてくださ~い」ってね!

 

マックン 「マスクはしたままで~す!」

 

パックン あと、お客さんを舞台に上げてクイズをしたり、僕らが客席に降りて話しかけることも多いんです。それがパックンマックンのスタイル。コロナが収まるまではそれをちょっと考え直さないといけなくなりますね。

 

 

オンラインならお客さん同士をつなげることも簡単にできる。

──オンラインでの講演会はどうでしょう?

 

パックン 一度、やりましたが、まったく問題なかったですよ。

 

マックン もちろん、人がいて笑い声が聞こえる、反応がある、ということは僕らにとって重要なんですけど、オンラインでの講演会をやってみたら手ごたえも良かったし、やっていけると僕らも実感しましたね。

 

パックン 移動の時間がなくなるからスケジュールの調整がつきやすいのはメリットだよね。リアルより回数はたくさんできるかもしれない。

 

マックン ただ、地方に行くとその土地で体験したことが経験値になるし、吸収できるものがあるからね。メリットでありデメリットでもあるというところかもしれない。

 

 

──オンライン講演会はこれから広まると言われています。

 

パックン 場所は関係ないから、北海道の人と九州の人が同時に参加できるしね。交通費もかからないよね。

 

マックン お弁当代もね!

 

パックン 楽しかったのは、自分の部屋からアクセスした人がいたこと。その人の生活スタイル、人となりが見えてくるんです。

 

マックン モニターにお子さんが映り込んだりね。

 

 

──オンライン講演会が増えたらやってみたいこととかありますか?

 

パックン 僕らの講演会はコミュニケーションを重視しているので、お客さん同士のやり取りや質疑応答が多いんですよ。オンラインならお客さん同士をつなげることも簡単にできるかもしれない。北海道の人と九州の人が僕らの講演会を切っ掛けに知り合えたら面白いよね。

 

マックン 僕らは小学校、中学校、高校に行って英語の楽しさを話すことも多いんです。今、IT化の推進で、学校もリモート授業でアクティブラーニングとかで英語を学ぶことに取り組んでいるでしょ。

僕たちが先生役として参加できるんじゃないかと思うんです。

 

パックン それはできるね。パックンマックンが特別講師としてね。

 

マックン 実際毎年、年に2回くらい、兵庫県の片道6時間くらいかかるところに講演に出かけています。そこではアクティブラーニング的な授業を、英語で触れ合いながら学んでもらっています。それがいつも好評なんですが、それをリモートでやるのはいいよね。

 

パックン リモートなら映像とかスライドも、機材や場所を考えなくても使えるしね。

 

マックン 僕らの講演会はパワーポイントを使ったりして、楽しみながら学ぶ方法が確立されています。学校の先生が試行錯誤しながらやろうとしているのなら、僕らの方法を参考にしてくれたら上手く行くと思う。

 

 

──企業のオンラインでの講演会でもいろんなことがてきそうですね。

 

パックン 僕らのコミュニケーションの講座では、企業のホームページにある、キャッチコピーがコミュニケーションのヒントになるということを話します。そのとき、エトス(人格)、パトス(感情)、ロゴス(表現)という、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが唱えた、人を説得し動かすための3つの要素で説明するのですが、リモートならホームページを画面共有して話せる。

リアル以上にイジリながら楽しんでもらえるかもしれない。

 

マックン 企業でも僕らのやり方を見てもらえれば、自分達の会議を盛り上げるヒントになるかもしれないよね。

 

 

──確かに、興味を引き付けるような会議になれば、みんなが参加しょうと思いますよね。

 

マックン うちの娘の学校では英語の授業をリモートでやっているんですよ。5人くらいのクラスなんですが、対面の授業よりリモートの方が恥ずかしくなくて、大きな声で英語を喋れると喜んでいます。しかも、先生はニューヨークに住んでいる人なんです。

 

パックン リモートならハードルが下がるんだね。それに、リモートなら名前も出るでしょ。5人いてもすぐに「斎藤さんどうですか」「鈴木さんどうですか」と言えるしね。

 

マックン 全員で話ができるだけじゃなくて、他の人はミュートしてもらって個別に話もできるしね。

 

パックン 英語の講演会では、人を舞台に上げて英語で会話するんだけど、舞台に呼ぶ必要もないからより多くの人と触れ合えるしね。

 

 

──可能性はたくさんありそうですね。

 

企業力を持ってポテンシャルの大きな未知の世界に挑戦する勇気を持って欲しい

──パックンマックンさんがテーマにされている国際交流、英語、コミュニケーションなどに対して、日本の課題をどのようにお考えですか?

パックン 違っても良いから英語を話す心構えをひとり一人が持つことが大切です。僕の日本人の友達は東南アジアなどいろんな場所に出張していたのですが、コロナの影響でそれがなくなりました。

でもリモート会議が増えたので、海外とのコミュニケーションの機会は減らなくて、逆に増えたそうです。

 

多分、同じように海外とリモートでの会議や打ち合わせは増えたという人は多いと思います。

だから英語がしゃべれない、通訳を介してじゃないと会話できない、でなくて、ひとり一人が英語を話す意識を持たないと通常に戻っても辛くなると思います。

 

マックン これだけリモートが発達すれば英語を話す機会は嫌でも増えるでしょうね。

 

パックン あと、僕は日本に来てもう27年目です。今でも外国人として注目されるけれど、昔は今の100倍くらい注目されました。

 

マックン 昔は外国人が珍しかったからね。

 

パックン 今は外国人が自分の生活のなかに普通にいる時代になりました。世の中は少し変わってきたけど、まだ外国人はアパートが借りられないとかローンが組めないとかがあって、日本で外国人はなかなか信用してもらえない面もあります。

あと、「外国人には解らないだろうけど、日本人には日本人のやり方がある」という考え方が根強く残っています。日本のやり方があるのは分かっているし、理解できないわけでもない。説明されると納得できるところもあるし、納得できなくて改善して欲しいところもあります。

 

前よりは海外の良いところを参考に、日本の良いところを保ちつつ改善して行くというプロセスが少しスピードアップしたけど、「これは日本のやり方」と断言して改善の余地を認めない人もまだいます。

 

だから、「日本は今まではこうだったけど、これからはこうしょう」という前向きな思想に切り替えることが重要だと思いますね。

 

マックン 確かに、日本人の僕としても「日本のやり方」にこだわっている部分もあるから反省しないといけないね。

 

 

──パックンさんはコメンテーターとして発信していても、「それは海外の考え方でしょ」で終わる部分もありますしね。

 

パックン ありますね。でも、僕の意見が響く人も増えているんです。タクシーの運転手さんに「パックンさんの言っていることはもっともだから、選挙に立候補してください」と言われたんだよね。

 

マックン 外国人は出れねーよ!

 

パックン 選挙権がもらえたら出るよ!

 

 

──パックンマックンさんの講演は企業でも参考に出来ることが沢山あるように思います。

 

パックン 英語を話そうという姿勢と勇気は、言語に限らず、どのような部分でも大事だと思うんです。完璧じゃないと恥ずかしいという日本人の考えは直した方がいい。できないことは恥ずかしいのではなくて、できないことに挑戦していることが格好いいのです。

企業も同じです。企業力を持ってポテンシャルの大きな未知の世界に挑戦する勇気を持って欲しいですね。

 

これは僕たちのコミュニケーションの講義につながるんですけど、常に聞く耳を持っているといろんなアイディアが湧いて来るんです。それを企画会議で「恥ずかしいから言えない」ではなくて、面白いからダメもとで言ってみよう、ブレインストーミングの観点でぶっとんだ案も提案する。

後で撤回するのは簡単なんだから、とにかく視野を広げる。情報源を多様化して、興味関心を持って、いろんなことにチャレンジして欲しいと思います。

 

マックン グローバルな人材育成を押している企業は多いけれど、グローバルな人材育成はパックンマックンに任せて頂ければと。

海外の人と笑いでコミュニケーションが取れる人は受け入れられやすいんです。そのコツとかポイントを僕らなら与えられると思います。

 

よく言われるのが、「外国人の観光客に何を話せばいいのかわからない」ということ。実は結構簡単なことだったりします。そういうことは教えられます。

 

パックン 僕らの講演会は、凄いデータとか、誰も知らなかったノウハウを伝えるということはあまりないけど、最終的に勇気を持って帰ってもらっています。

 

マックン 勇気とやる気ね。国際交流も英語も、金融関係もそれこそ子育ても楽しいこともあるし失敗もある。失敗をネタに変えて成功することもできます。

 

パックン テーマは複数あるけど、僕たちのスタイルは笑わせて、ちょっと考えさせて、最後に勇気を持って明るい気持ちで仕事や私生活に戻ってもらうというもの。会場から出ると世界や人生は面白い、だから頑張ろう!と気分転換になると思いますよ。

 

 

──パックンマックンさんなら、硬い話でなく気軽に聞ける。でも、そこから吸収できることはたくさんあるように思いました。貴重なお話しありがとうございました。

 

 

 

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