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西脇資哲 講演会講師インタビュー

日本マイクロソフト社の業務執行役員でエバンジェリストの西脇資哲さん。エバンジェリストとは、最新のテクノロジーや情報を大衆向けにわかりやすく説明し、啓蒙普及活動をする人のことだ。西脇さんは同社ですべての製品、サービス、技術を伝え広める特命を担っているが、IT業界全体の“伝道師”としての信頼も厚い。そのプレゼンテーション能力の高さから、コミュニケーションやデモンストレーションについてのアドバイス、講演会、執筆活動など幅広く手掛けている。
講演依頼のSpeakers.jpでも人気講師で積極的に講演会を行っている西脇さんに、最新のIT業界情報やプレゼンテーションにまつわる話を聞いた。

(text:高田晶子、photo:遠藤貴也)

IT業界にエバンジェリストが多い理由がある

――西脇さんの現在の肩書きは“エバンジェリスト”ですが、ピンとくる方はそう多くないかもしれません。まずは現在に至るまでにどのような道を歩んできたのか、西脇さんのご経歴をお教えください。

 

西脇資哲 私は岐阜と名古屋の小さなソフトウェア会社で、プログラマーとして仕事をしていました。プログラマーは文字通りプログラムを作る人です。例えば、カメラにはシャッターを押した時に内部がどのように動いて、写真をデータに落とし込むかというプログラムがすべて設計されています。パソコンも携帯電話も車もそうですね。デジタル機器には何にでもプログラムが入っているものです。そのプログラムを作っていました。

’96年には、日本オラクル社というコンピューターソフトウェア会社に転職しました。日本オラクル社ではプロダクトマーケティング業務などを経験して、プレゼン力を磨きました。日本オラクル社で13年間勤めた後、’09年にマイクロソフト社に移り、マイクロソフト製品すべてを扱う唯一の日本人エバンジェリストとして、現在勤続14年目になります。

 

――前社も含めると27年、外資系のIT業界にいらっしゃいますね。

 

西脇資哲 最初の会社で小さなモニター画面を相手にずっとプログラムを作っていると、コンピュータ、つまりインターネットやシステムに詳しくなります。カッコイイ言葉で言えばヘッドハンティングだったのですが、岐阜の田舎者が東京で仕事ができるうえに今よりも高い給料を貰えるならと、喜び勇んで東京に出てきましたね。

 

――エバンジェリストの仕事内容や、その業務に就いた経緯を教えてください。

 

西脇資哲 外資系企業だと、その企業のトップがプレゼンテーション(以下、プレゼン)をするイメージがありますよね? Appleのスティーブ・ジョブズはiPhoneの新作が出るたびにプレゼンをしている姿は有名です。私がやっているのは、まさにそれです。エバンジェリストは直訳すると“伝道師”という意味になります。物事を伝えていく人です。私の仕事は、自社製品を詳細に理解し、わかりやすく人に伝えることが業務内容になります。

外資系企業に勤めていると、プレゼンが上手な人がとても多いです。私も最初の会社に勤めていた時から、ありがたいことにプレゼンが上手いと言われていました。日本オラクル社に入った時にも自分のプレゼンのフィードバックを聞いたところ、やはりわかりやすいと褒められました。もともと人に何かを伝えることに長けていたのでしょうね。そこで、いろいろな人たちのプレゼンを見聞きして、「この人のプレゼンはなぜ上手なのか」「逆にこの人のプレゼンはなぜ下手なのか」などを分析・研究して、体系立ててみたのです。例えば、外国人は身振り手振りを大きくつけて、話を聞いている人に対して真摯に伝えようとする姿勢の人が多いのですが、それは全部プレゼンのテクニックなのです。

 

――エバンジェリストはIT業界に多いのでしょうか。

 

西脇資哲 そうですね。IT業界には多いのですが、金融業界にも観光業界にもいますし、どの業界にもいます。数えたわけではないので、実際の数は把握していませんが、例えば、コーヒーに詳しい方はコーヒーエバンジェリスト、居酒屋に詳しい方は居酒屋エバンジェリストなどのように、何でもいいのです。

エバンジェリストは日本語で「伝道師」と訳される通り、物事を伝える人のことを指します。IT業界は技術の進歩とともに目まぐるしく変わっていくので、一般の方にわかりづらいことが多い。だからこそ、わかりやすく上手に説明出来る人が重宝されるし、他の業界に比べて多いのだと思います。

 

――西脇さんはマイクロソフト社で唯一の全製品のエバンジェリストなのですよね。エバンジェリストの仕事と、営業や広報・宣伝などとの違いを教えてください。

 

西脇資哲 簡単に言うと、営業は他社から案件を取ってくることが仕事。案件の受注がいくつあるかということで評価されます。広報・宣伝は自分たちの会社や自社製品の情報発信が仕事になります。ネガティブな情報は自ら出しません。

その一方で、エバンジェリストは営業と違って数字で成果を計られないですし、広報・宣伝よりも業界全体を見て「ここが自社製品の悪い点です」「この点においては他社製品のほうが優れています」など、公平に説明することが求められています。だから、信頼されますし、エバンジェリストに相談してみよう、話を聞いてみようという人が多いのです。

YouTuberやSNSのインフルエンサーと呼ばれる方は講演会で高齢の方に向けて何かわかりやすく説明することはなかなかありませんが、エバンジェリストはIT業界を全くわからない高齢の方に向けて講演をすることもあります。私もTwitterなどで情報発信もしますが、TOKYO FMとJ-WAVEで自分のラジオ番組も持っていますし、メディアから取材を受けたり、自分で執筆や講演をしたりなど、違うメディアでも活動をしています。それがエバンジェリストとインフルエンサーの違いとも言えると思います。

 

 

今のIT業界はチャットGTPを中心としたAI技術、DX戦略がカギ

――最新のIT業界の動向を教えていただけますでしょうか

 

西脇資哲 IT業界は日々目まぐるしく変わるのですが、今注目されていることはDX戦略ですね。DXとはデジタルトランスフォーメーションのことで、政府や企業がデータとAI技術などのデジタル技術を活用して、社内業務そのものだけではなく、組織やプロセスを変革して、顧客に向けた製品やサービス、ビジネスモデルも新たに創造することです。今でも日本は官公庁も企業も紙を使っていたり、伝票があったり、印鑑が必要だったりと、かなりアナログな作業を必要とすることが多い。アナログもいい面がある一方で、デジタルが効率的だということは明白なので、社会の仕組みを変革しないと国際競争に負けてしまうんです。ですから、DX化が今日本社会全体に求められています。このDX化に欠かせない技術のひとつが、チャットGPTをはじめとするAI技術です。AI技術を使って企業を変えて、社会を変えていこうという動きは今加速しているかと思います。

 

 

――コロナ禍によってデジタル化が加速した面もあるのでしょうか。

 

西脇資哲 そうですね。それもあるかと思いますが、コロナ禍前からDX戦略を進めなければ、日本は産業の経済競争力が落ち、企業が倒産して、どんどん国力が落ちてしまうという状況でした。
私はもちろんチャットGTPなどのAI技術に関しても精通していますが、ドローンの専門家でもあります。エバンジェリストは最新情報を世の中に広める役割もあります。これから来るものをいち早く勉強して、身に着け、周りに「これからこういう新しいものが来ますよ」と説明できなければいけないのです。

 

――西脇さんはものすごく勉強されるということですね。

 

西脇資哲 私自身、好奇心があることばかりなので、それは全く苦になりません。ドローンに関して言うと、2025年の大阪・関西万博に有人ドローンを飛ばす予定なのですが、実は私は2012年からドローンについてのセミナーなどを日本で開催しているのです。インターネットでフランスのドローンを見ていて、これはすごいし面白い、フランスでも将来役立つと言われているから、買ってみようと思って、2010年にフランスから輸入してみました。実際使ってみたら、今ひとつよくわからなかったので、いくつか買ってみて自分で動かしながら猛勉強しました。ドローンの第一人者とまでは言えないかもしれませんが、先駆者のひとりではあると思います。

 

――そのような新しい情報は、どのように入手するのですか。

 

西脇資哲 とにかくインターネットです。もう夜中はネットの鬼ですね(笑)。YouTube、TikTok、X(旧Twitter)、Instagramに加えて、今はアメリカの掲示板投稿型SNSの「Reddit」や中国版のInstagramと言われているSNSアプリ「小紅書(RED)」などまで見ています。英語や中国語も今ならワンクリックで翻訳できますから、アメリカや中国の最新情報も常にチェックするようにしています。

 

 

どんなにデジタル化が進んでも、対面の講演会は絶対に必要

――コロナ禍の影響もあり、現在はオンラインのトークセッションや講演会も多いと思います。

 

西脇資哲 知識や情報をピックアップするだけならオンラインでも十分事足りるとは思いますが、対面の講演会の需要は必ずあるものです。コロナ禍の3年間は厳しかったかもしれませんが、日本のみならず、世界中でセミナーや勉強会などのコミュニティは当たり前にあるので、デジタルの時代になっても、人が集まり、情報交換をする懇親会は絶対になくならない。そこで「西脇さん、今の旬のトピックについて講演してくれませんか」と声がかかります。

 

――実際に講演会で西脇さんはどのようなお話をすることが多いのでしょうか。

 

西脇資哲 基本的には今お話してきたIT系の話がメインなのですが、ニーズとしては「今、旬なことを説明してください」とよく言われます。今ならAI技術、チャットGTP、DX戦略、仮想通貨、メタバースの話が多いです。

 

――どのような方たちに向けて講演するのでしょうか。

 

西脇資哲 講演会は民間企業や自治体や中央省庁からのオファーもあれば、政治家の方から勉強会のご用命があることもあります。国会議員の方は最新のIT業界についての勉強が不可欠ですから。私はプレゼンのアドバイスもしているので、選挙期間前になると、選挙演説のやり方を教えてほしいという依頼もあります。

講演会は相手の年齢層も学生や新入社員など若い人から、40~50代の商工会議所青年部の人、60代以上の企業の経営者までさまざまです。先日は、京都のお寺の住職が集まる団体からの依頼もありました。車椅子に乗った高齢の方もたくさんいらっしゃいましたね。そういう方たちに対して、「ITについてわかりやすく講演してください」と言われたので、頑張りました(笑)。皆さん「へぇ~」「なるほどね~」と納得して帰られたので、よかったです。

 

お寺とITは全く関係なさそうなのに、講演会の依頼があるところが面白いですね。

 

西脇資哲 逆に言うと、接点がない人たちほど情報を欲しがっている気がします。IT業界に近い人たちは基礎的なことはわかっているので、自分たちでさらに情報や知識を得ることができます。だから、ITやデジタルに全然縁がない人ほど「イチから勉強したい」と思っていることが多いのですよね。自分ではどこからどう手をつけていいかわからないですから。

私は小学生にパソコンの使い方やAIについて教える勉強会などもしています。小学生はアップデート、インストール、アプリなどはわかっている子が多いのですが、高齢の方になると、これらの概念自体がわからない。そこから説明しなくてはいけないので、かなり丁寧にお話しするよう心掛けています。

 

――話す対象によって、内容も変えないといけないのは大変ですね。プレゼンで大事なポイントも簡単に教えていただけますか。

 

西脇資哲 いちばん大切なのは、相手に合わせること。まずは自分の話すことを相手が理解できるかどうかを考えながら話すようにします。そして、もうひとつ大切なことは相手を巻き込むこと。例えば、「どうですか?」「わかりますか?」などと私が相手に向けて質問するのです。このように相手の理解度に合わせて同じペースで進むと、なおいいと思います。プレゼンをする人はどうしても自分で全てを説明して勝手に進めてしまいがちですが、相手に確認をして、わかっていなさそうだったら言葉を言い換えたり、あるいは相手の体験を聞いたりして、きちんとキャッチボールができるようにする。この2点を守れば、プレゼンは上手くいくと思います。

 

――日本人はプレゼンに慣れていないですものね。

 

西脇資哲 そんなに苦手意識を持たなくてもいいと思います。別に失敗したっていいと思うのですが、人前に出る機会が少ないだけなのですよね。今の教育システムではなかなか自分の意見を発言したり、プレゼンしたりする場がない。それが、大学生になって初めてプレゼンをしなくてはならなくなるのだから、今の大学生は大変ですよ。やっと最近になって、私が小学生、中学生、高校生に向けて、プレゼンについての勉強会をすることも増えてきました。

今まで宇宙飛行士の基本の選考基準は、学歴、実務経験、身長、体重でした。ところが、今では学歴不問、実務経験は社会人として3年間何かをしていること、宇宙船内で作業をしなければならないので身長と体重はある程度考慮されますが、新しくプレゼン試験が加わったのです。つまり、これからの時代は自分をアピールする力が重要視されるようになってきているのです。

 

――最後に、特に西脇さんが講演会を通して伝えたいこと、聞いてほしい話などはありますでしょうか。

 

西脇資哲 大いに好奇心を持って、新しいテクノロジーや世の中のトレンドをインプットするようにしてほしいですね。インプットしたら、アウトプットもしてほしい。要はプレゼンをどんどん積極的にしてほしいです。私はアウトプット、プレゼンのやり方も教えています。インターネットに触れるならSNSを活用する、そうしたアプリやサービスをどんどん使っていってほしいですね。

 

――貴重なお話をどうもありがとうございました。

 

 

 

 

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