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スポーツコメンテーターとして活躍中の八木沼純子氏。14歳という若さでカルガリーオリンピックという世界の舞台を踏んだ体験は、今、浅田真央はじめ多数のスター選手の活躍で活況を呈するフィギュア界の先駆者の一人ともいえる。
アマチュアからプロ、さらにキャスター、解説者へとジョブチェンジしながらキャリアを積み重ねた八木沼氏のチャレンジ精神は、どこから来るのか
(text:志和浩司、photo:志和浩司)
八木沼純子:私が友達と家の近所のリンクに行って、スケート教室に入ってみようと思ったとき、ちょうどそこでフィギュアスケートのオリンピック選手だった福原美和さんが教えていらっしゃったんです。母親の学生時代の1学年下だったそうで、何十年ぶりかの再会をして、福原先生がいるなら私を通わせてみようかなと思ってくれて、それで通うようになったんです。
結局、そういうご縁があり、後に福原先生が私のコーチになってくださったわけです。
八木沼純子:ありますね。小学校5年生になる前、通学に1時間半かかる遠い学校から近い学校に転校して、授業時間以外はリンクで思う存分練習できるっていう環境が整ったんですけど、体がついていかなかったり、友達も含め環境もがらりと変わって、自分の気持ちがうまく歯車に乗っていかなった時期がありまして。
そのとき、「いいのかな、本当にこのままでうまく行くのかな」って思ったことはありますね。ただ、周囲には同じ年齢ぐらいのライバルがたくさんいたので、そういう人たちを見て、自然と私も頑張らないとって思えました。
八木沼純子:よく、いろんな曲を聴け、と言われるんです。その曲にどういうストーリーがあるのか、自分ならどう思うのか、どういうリズムをとるのか、そう考えることによって、自分だったらスケートの上でこう表現していこうかな、というところにつながっていくんです。リンクの上で滑るだけじゃなくて、オフアイスのところでバレエやダンスのレッスンにも行きました。
八木沼純子:そこが一番難しいですよね。どんな仕事でもたぶん同じだと思います。何をやっても、空回りしてうまく行かないときというのは、必ずあるんですよね。
最終的には誰も助けてくれないので、自分でやるしかないんですけど、「どうしてこうなったのかな」っていう、原因を確認する作業が必要になるんだと思います。
悩んで、そこで止まってしまったらしょうがないので、もう一回自分を基本に戻してあげるというか。原点に立ち返って、自分は何をやりたかったのかな、と考えながら練習も一から繰り返して行くんです。
八木沼純子:荒川静香選手や安藤美姫選手、浅田真央選手、男子なら高橋大輔選手、羽生結弦選手などトップスターに共通していることがあるんですよ。それは、「持っているものが強い」。スケートを人前で披露することが好きで、持っている意志が強いんです。
八木沼純子:観に来てくださる方は毎回同じじゃないので、反応がくるところも毎回違う。毎回勉強になるし、お客様と対話をするイメージで滑ることが大事ですね。自分が満足するんじゃなくて、お客さんも満足させないとプロじゃない。
八木沼純子:決まったのが1週間前だったんです。カメラテストもやって、原稿も読んだんですけど、当時はプロンプタ(カメラ目線のまま原稿が読める装置)ではなく、手で原稿を持って目線を上げ下げして読む時代だったので大変でした。週5日、スポーツコーナーは夕方5分ぐらいの枠だったんですけど、その短い時間に自分がどういうコメントを話すかが大事でした。
選手の頃は自分の試合のことだけ考えて過ごしていましたが、プロに入ってアイスショーを滑るようになってからは、いろんな人の協力があってリンクに立たせてもらっていることがわかりました。テレビもアイスショーも同じで、みんなでひとつのものを作っていると感じ、とても勉強になりました。
八木沼純子:フィギュアスケートは回転数やステップ、ジャンプの難易度など複雑で、多くの視聴者にとって「解説」は重要な役割を果たしていると思うんです。わかりやすさはもちろんのこと、視聴者にとって演技を見るのに邪魔ならない見やすさといった面では、注意していますね。
それから、必ずその選手の素晴らしいところを言います。何か少し演技に問題があれば、今回はこういうマイナス面があったので、点数がちょっと気になると。いいところと気になるところをひとつずつ入れるようにしています。悪いところがあっても、全部だめなわけじゃない。そういうところを気をつけていますね。
八木沼純子:技術的なものと芸術的なものと2つ楽しめる競技だと思うんですね。これまで、まったくフィギュアを観たことのない人にも、この選手はどういう衣装を着て、この音楽でどう滑るのかなとか、一緒に音楽を聞きながら楽しんでもらえることもできる。
八木沼純子:私自身は世界チャンピオンでもないしオリンピックのメダリストでもないのですが、今の時代、いろんな道を進んでいる元フィギュアの後輩たちも出てきて、「八木沼さんを見て、自分も八木沼さんのような道を歩みたいって思ったんですよ」って言ってくれる子も少なくなかったんです。
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