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派手な入場パフォーマンス、機敏かつトリッキーな動きで魅せてくれた、元総合格闘家の須藤元気さん。2006年に引退して以来、作家としてベストセラーを出したり、書道家として毎日書道展に入選したり、はたまた、映画監督、講演会講師、俳優、ミュージシャンとして活躍したりと、まさにリング同様「変幻自在のトリックスター」ぶりをみせてきた。
その須藤さんにインタビューする。人を楽しませる才能にあふれているあの須藤さんのインタビューだ。どんなに楽しくて、笑いにあふれるのだろうか。期待に胸をふくらませて訪れた事務所。そこでお会いした須藤さんは、穏やかな瞳と、予想以上にさわやかな笑顔、そして、インタビュアーに思わず人生相談させてしまうほど、ポジティブでパワフルなエネルギーを持った方だった。
(text:中西奈津子、photo:今井美奈)
須藤元気:これは、「すべてはひとつ=We are all one.」であれば、目の前の人は「他者」ではなくなるという考え方です。
結局、この世界を良くする、自分自身を良くするのは「世界はひとつ」という意識だと思うんですね。お互いバラバラだと考えているから、人から何かを取ろうとしたり、戦争があったり、色々なことが起こるのであって、「他者じゃない」と思えば、自分に対しては優しくするでしょうし、チャンスを与えるでしょうし、決して傷つけたり、悪口を言ったりしないと思うんですね。
そういう「すべてはひとつ」だという意識を持てば、本当に一晩で世界は変わると思うので、「We are all one.」というモットーを掲げています。
須藤元気:ええ。人に与えれば、逆に与えられる。そこが「We are all one.」なんですよね。ある意味、究極の自分勝手というか。人のためにしてあげることは結局自分に返ってくるので、自分がうまくいこうと思ったら、それ以上のものを他者に与えるんです。笑顔でも何でもポジティブなものを与えると、ポジティブなものが返ってくる。この「We are all one.」という考えに立つと、ホントに、Win‐Winの関係しか成り立たないんですよね。
須藤元気:格闘技をやっていた時は、「We are all one.」というより「I am only one.」でした。「他者を蹴落としてでも」と周りの人を一切かえりみずにいたので、何度か痛い目を見た経験もあります。
あとは、ニューヨークの同時多発テロがあってからですね。自分が成功しても世界が終わったら終わりだと考えるようになって、そこから、「格闘技を通じて何かメッセージを届けられる自分になろう」という目的意識が芽生えました。
もともと「男子たるもの世の中を良くするような仕事をやろう」と子供の頃から思っていたので、悲惨な事件を見て、「何かを変えていこう、世界を変えるには、まず身近な人を幸せにしていかなければ」と思うようになりました。それからは、後輩や練習パートナーへの付き合い方が変わりましたね。「練習パートナーがいるから強くなれるし、対戦相手がいるから興業が成り立つ。周りに人がいなければ、何の表現もできない」と思うようになったんです。女性との付き合い方も変わりましたよ。まあ、何度か葛藤しましたが(笑)。
須藤元気:もともとはネガティブだったんですよ。否定的なエネルギーが強くて悩みやすく、ずっと葛藤していました。だから余計に、その悩みや葛藤を拒否して幸せになろうとしたんです。
まずは、「肉体的に強くなれば、精神的にも強くなれる」と思って格闘技を始めたんですが、肉体的強さと精神的強さは比例しませんでしたね。
須藤元気:比例しなかったですね。
実際に強い人は「強くなろう」と思わないじゃないですか。弱いからこそ強くなろうと思うんです。格闘技や強さに興味のない女性が、実は最強だということに、最近、気付きました。女性は強いですね。嫁も含めて、マネージャーも(笑)。女性にはかなわないです。
須藤元気:よく講演で話すんですが「自分を成長させてくれた3つのこと」というのがあります。それが、本を読むこと、旅をすること、瞑想することなんです。
須藤元気:最初はいわゆる成功本といわれるものを読んでいました。やはり、いかに楽して成功するかを考えていたからなんですね。
肉体という物質的なもの以外の力を借りれば、格闘家として、もっと楽に成功できる、楽に強くなれると思って。20歳から3年間ぐらいはノルマをつくって、1日3冊読んでいました。
当時は、本質的なものを理解するまでには至っていませんでしたが、成功本の小手先のテクニックは学びましたね。「夢は紙に書いて壁に貼ってサブリミナル効果を使うんだ」といった(笑)。
須藤元気:やはり、それを行動に移すことの大切さですかね。読むだけで終わらせないという。実際、本で学んだテクニックが収入につながったこともあります。
よく「本読む時間がない」という人がいるけど、「本を読まないから時間がない」んだと思います。本を読めば効率のいい方法が書いてあるので、忙しい人ほど、本を読めばいいと思います。
須藤元気:「旅をすること」というのは、行動に移すことです。
本を読めば、内容を「理解すること」はできますが、決して「知ること」はできません。本で得た知識を行動に移して、知識と現実とのズレを埋めていくことで、ようやくその知識が自分自身の知恵になるんです。
僕は、「旅をする」という非日常の世界に身をおくことで、それを実践しやすい環境を作りだしているんです。脳科学でも「違った環境に行くと脳は活性化する」と言われていますが、それと同じで、本で読んだものをしっかりと咀嚼(そしゃく)するには、旅がいいんです。
例えば、ガイドブックに載っているお店が本当に美味しいのか、それを体験することも、温度差やズレを埋めることなんですよ。本を読んでわかったふりをしてしまうのを防ぐには、この「旅をする」という手段がいいんです。
須藤元気:前頭葉の活動を止めている状態で、考え事をしていない状態。簡単にいえばリラックスしている状態のことです。
色々な方法があるんですが、僕は朝晩30分ずつ、頭に脳波計を付けて、自分が瞑想状態に入っているかどうかをチェックしながらやっています。そして、この瞑想が、夢を叶えるために、とても大切なんですよ。
須藤元気:この世界は、人間の考え、つまりイマジネーションによって作られています。
考えてみてください。花や海などの自然以外は、机も椅子も、携帯電話も、誰かがイメージして、行動したからこそ、現実化しているわけです。はじめにイメージありきだから、夢だけをずっとイメージし続けることができれば、すごく早くそれが実現できるはずなんです。
でも人間は、1日に6~7万回考えると言われているんですが、「あ、今日は何食べようかな」「雨は嫌だな、太陽でないかな」とか、どうでもいいことを1日に何万回も考えてしまうんですよ。だから、瞑想して、無駄な情報を捨てることによって、自分が本来やるべきこと、進むべき道が、直感的にお腹からポンとあがってくるんですよね。
須藤元気:頭の中はノイズだらけなのに、この直観というのは、ささやいてしかくれないんですよ。このささやきを聞くには、ノイズを下げなければいけない。そして、このノイズを下げる方法が、瞑想なんです。僕はメディテーション本来の瞑想を取り入れていますけど、もっと簡単な方法として、「今、この瞬間に生きる」ことがあります。
須藤元気:心から楽しいこと、ワクワクすることに、時間を忘れて集中することです。
例えば、カラオケ好きな人が、自分の十八番をこぶしをきかせて歌っている状況っていうのは、「今を生きている」んですよ。歌に集中している時、過去の嫌なことや、明日の仕事のことは考えていませんよね?リラックスして、脳にアルファー波が流れている、つまりこれは、瞑想状態なんです。
この「今を生きる」方法は人によって違います。ネコと遊んでいてもいいし、走っててもいい。好きなことに集中している状態を増やしていくことが、夢の実現や悩みの解決につながるんです。
須藤元気:最近は、頭で考えるのではなく、お腹に聞く癖ができました。頭で考えるのは損か得かですから。損得で考えると突き抜けたものは生まれないし、逆にチャンスを逃してしまうこともあると思うんです。
「それをやったら楽しいかな」とイメージした時に、お腹の中から湧き上がってくる熱いものがあれば、これは本物だと、お腹で判断しています。
須藤元気:幸せは「経験」ではなく「意思」であると伝えたいです。何かを経験したから、幸せという意思ができあがるのではなく、幸せだという意思のもとに、その幸せな経験がやってくると思うんです。
例えば、「素敵な恋人ができたから幸せになる」のではなく、「自分は幸せだ思っていると、素敵な恋人が現れる」のだと思うんですよね。意思が経験を呼び寄せるんです。これは、幸せだけではなく、強さもお金もです。お金持ちになりたかったら、「お金持ちになりたい」と思うのではなく、「いま、自分はお金持ちだ」と思うようにするんです。
どんなに貧乏でも「300円もある」、1円も持ってなくても「自分は今、金持ちになりつつある」とポジティブな意思を持つことで、その経験がやってくるんです。捉え方を変え、自分が「今この瞬間満たされている」という意思を持つことが、その現実を引き寄せる。それが「We are all one.」。すべてがひとつなわけですから。
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