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天達武史 講演会講師インタビュー

野球に明け暮れていた高校時代。アルバイト生活を続ける中で「天気」を身近に感じるようになり、気象予報士試験に挑戦。
現在、フジテレビ『とくダネ!』の天気予報を担当。フジテレビ本社社屋前にて予報を行う。
「どんな天気の場合でも外から伝える」ことを大切にしている天達さんに、天気のこと、テレビで伝えるということや防災のことなどを聞いた。

(text:三宅扶樹、photo:吉田将史)

成功体験が欲しかった

天達武史──気象予報士になろうと思ったきっかけを教えてください。

 

天達武史:高校時代は、野球ばかりしていて勉強はあまり・・・。
高校卒業後も将来のことなんて考えてなかったんですが、絵を描くのが好きだったので、とりあえずデザイン関係の専門学校に行きました。

でもそこでも具体的な目標はなくて、ただ遊ぶお金が欲しくてファミリーレストランでアルバイトを始めたんです。
そのまま、なぜかそのアルバイトを10年近く続けることになるんですよ。

 

──就職しようとは思わなかったのですか?

 

天達武史:今思うと本当に情けないのですが、実家にずっといてアルバイトしてるという生活にあまり疑問を感じず生きていました。それに、アルバイトでも長くいるといろいろ任されるようになっていったんです。

 

──そこに“やりがい”みたいなものを感じたのですか?

 

天達武史:いえ、そういうことでもなかったのですが、一所懸命には取り組んでいました。
長く勤める中で『食材の発注』を任されるようになっていったんです。
私が勤めていたファミレスは、海の近くにあったので天気によってお客さんの数にかなり差が出るんですね。なので、食材の仕入れ数は天気に大きく影響されるので、そういうことから自然と天気を気にするようになっていきました。

 

──そこで、気象予報士となるわけですか?

 

天達武史:はい。このようなアルバイト生活を続けていることにどこか不安もありましたし、ちょうど新聞広告に“気象予報士講座”という募集記事が出ているのを見つけて「やってみよう」と思いました。

でも、学生時代はあまり積極的に勉強してきたわけでもないし、得意だったのは体育と美術でしたから、気象の勉強は本当に大変でした。参考書を読んでもわからないことがわかならいような状況で。そんなに簡単に受かるわけないですよね。

 

──7回目の受験で受かったのですよね。あきらめなかったのはなぜですか?

天達武史

 

天達武史:受講料を払ってしまったということが、一つ。
そしてもう一つは“成功体験”が欲しかったのです。
野球はずっとやっていましたが、ずっとレギュラーと補欠の間くらいの中途半端なものでしたし、デザインの専門学校でも特にはっきりと○○デザイナーになりたいというビジョンがあったわけではないのです。
今思えば劣等感のようなものはずっとあった気がします。

 

──勉強の仕方にコツはあったのですか?

 

天達武史:アルバイトを続けながら受験していたので、休みの日にまとめて勉強していたんですね。そうすると、1週間経つと忘れていることも多くて。効率的な勉強方法ではないのですが、そうするしかないと思ってたんです。
2年くらい経って、なかなか受からない状況が嫌になってきた頃、ある職場の方に「10分でもいいから毎日必ず参考書に向かうように」とアドバイスされました。そんな事で違うのか?とも思いましたけど、疲れていても夜寝る前やアルバイト前の朝などに必ず目を通すようにしたんです。
すると最初は半信半疑でしたけど、昨日の続きなので復習の時間も省けるし、頭にすうっと入るようになっていったんです。それで2002年、無事に合格できました。
その勉強法を教えてくれたのは、今の奥さんです。

 

 

“伝える”難しさ、楽しさ

天達武史──『とくダネ!』に出られるようになったのは、どういういきさつですか?

 

天達武史:オーディションです。これはもう本当に“たまたま”だと思うのですが、ラッキーでした。僕は2005年10月から担当させて頂いているのですが、それまでの『とくダネ!』では、専属のお天気キャスターではなく、アナウンサーの方がお天気を伝えていらっしゃいました。2004年は台風が10個も上陸という年だったので、僕の上司がその都度解説で出演していたのですが、番組側で『とくダネ!』専属のお天気キャスターがいたほうが良いということになり、オーデションで合格ということとなりました。

 

──毎日、お茶の間のみなさんにお天気を伝えるにあたって心がけていることはありますか?

 

天達武史:わかりやすいことはもちろんなのですが、“1ヘエ”は自分に課してします。伝えることの中に、必ず1つみなさんに「ヘエ~」と思って頂けるようなことを入れるようにしています。

今はネットで簡単に天気がわかるので、テレビの天気予報はますますエンターテインメント化してくると思うんですね。
言葉だけでなく、動きや好きだった絵などの視覚的なものもより多く取り入れて、付加価値を高めたいと思っています。
それから、情報を捨てる勇気も持つようにしています。とにかくたくさん伝えようとあれもこれもと思ってしまいがちですが、わかりやすく有効な情報の取捨選択も大切なことだと思っています。

 

──その日の天気がどうだったのか検証などもしているのですか?

 

天達武史:そうですね。晴れは晴れでも季節や場所によってちがいますし、また予報ですから外れることもあります。“降る降る詐欺”とか言われるんですけどね(笑)。でも外れるのは必ず理由があるんです。それは検証しています。それを探求していくことが、この仕事のやりがいでもありますね。

 

 

天気予報は防災予報でもある

天達武史──地球温暖化について教えてください。

 

天達武史:日本列島全体の気温が上がっているのは確かです。
ゲリラ豪雨などが本当に増えてきました。また天気の移り変わりも大きくて、それを“極端天気”というのですが、ゲリラ豪雨の取材に行ったら、雨は上がってしまい猛暑のことを伝えることになったということもありました。
温暖化、そして異常気象はこれからますます進行していくと思います。

 

──災害への対処は、私たちはどう考えればいいのでしょう?

 

天達武史:私たちは、より正確に情報を伝えなければいけないのは責務なのですが、受け取る皆さんも想像力を働かせて欲しいと思います。
それにはまず災害を知ることが大切です。ご自分の住んでいる地域や働いている都市では、過去にどのような災害があったのかを知るのも有益でしょう。

 

──講演では、どのようなお話をされるのですか?

 

天達武史:温暖化や異常気象などについてですが、先ほどお話した“災害についてもっと知って欲しい”というお話をよくしますし、「ゲリラ豪雨から身を守る方法」なんかもお話します。

話だけでなく写真など、事実に基づいた資料や私の経験談も多く取り入れてわかりやすく伝えることを心がけています。
親子向けだと、例えば温暖化になると地球はどういう状況になるのか?を、ペットボトルを使って実験したり、雲や竜巻が発生する状況をわかりやすく簡単にお見せすることもあります。
お子さんはもちろんですが、理屈ではわかっている大人の方にも「なるほど、そういうことだったのですね」などと感想をよく頂きます。

 

天達武史──最後に講演で伝えたいことを教えてください。

 

天達武史:天気は毎日の生活の中で切っても切れない大切な事象です。
その日の皆さんの行動はもちろん、気分ややる気などにも関係してきますよね。さまざまな会社でも気象をビジネスにしたものが続々と出てきています。
そんな日常に関わることを仕事にしていること自体がとても恵まれているとも感じますが、気象について皆さんにももっともっと身近に感じてもらえるように、講演では飽きずに聞いていただけるよう、実験やクイズも交えてお話しします。
今の天気予報は、災害についてなどさまざまな情報を提供できるようになりましたが、それをどう捉えて、どう考え、どう対応するのか?
やはり最終的には、自分の身を守るためには適応力が大切で、「災害をしっかりと知ることが大事」ということをお伝えします。

自分の住んでいる地域では昔はどんなことがあった土地なのか?この場所で大雨となった時にどうなるのか?想像力を働かせて欲しいということもお伝えしていきたいです。
気象予報は防災情報でもあります。
ご自分の身の守り方などを考えるきっかけになってもらえるといいなと思っています。

 

 

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