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NO.016 家田荘子氏- 青少年育成・人権 ー

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一緒に歩んで行きましょう~あなたの愛を求めています~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は常に「弱者」や、「光の当たっていない世界」「光の当たっていない人々」に長年スポットを当て、取材をし続けています。
よく人に聞かれます。

「どうして弱者を?」と。

それは私が弱者だったからです。

 

私は物心ついた時から両親に殴られ怒鳴られ、おびえながら育てられました。今でいうドメスティックバイオレンス(虐待・DV)です。まだ人権やDVといった言葉がないに等しい時代で、私は自分が親から毎日受けているものが「暴力」であるということさえ認識しないまま生きて来たのです。

 

 

 

何か言ったら殴られる。
怖いから黙る。
感情を呑み込む。

 

毎日ののしられ否定されることによって、ずい分我慢強くなりました。
さらに悪いことは重なり、転校生だった私は、小学校でいじめにも遭いました。

 

初めていじめに遭った日、帰宅して母親に告げたところ、「いじめられる方が悪い!」と、また怒鳴られ殴られそうになったので、(いじめられる方のが辛いのに、どうして?)と大変なショックを受けました。何でも「私が悪い」と親から教えられて来たため、いじめに遭って以来、(人に苦しいってことを言っちゃいけないんだ)と心得るようになりました。

 

後に作家になった時、「人は苦しみを心の奥にしまい込んで笑って生きている」と、子供時代のことを思い出し、弱者や、頑張ろうともがいている人々に目を向け、取材するようになったのです。

 

 

 

 

私は誰にも相談できませんでした。

 

私をいじめている子たちは、クラスで「よい子」と言われている人気者でしたから、先生も親も他の大人たちも、「いい子の見本」のように彼女らを褒めていました。DVを受けていて、ネの暗い私はいつも比較の対象にされていました。そんな先生も親も大人も敵でした。ずっと寄り添ってくれていたのは家にいたネコだけでした。

 

 

こういう思いをしている子供たちが今も大勢いると思います。

 

 

家族の人数が減り、また三年半に渡るコロナ禍によって、人と対面して話をすることがもっともっと苦手になり、その結果、もがいている子供たちが増えました。またコロナ禍でリモートや自宅勤務が増え、ストレスから家庭内暴力が全国で大増加しました。人に言えないけれど実は、苦しんでいる人々が、とても増えてしまったのが現実なのです。

 

このもがいている人々を何とか救わなくてはいけない。救いたい……と、日々真摯に活動されている人々が大勢います。
まず行政の相談窓口です。プロフェッショナルな人々が日々、市町村の人々に寄り添い、傾聴し、前を向いて光を見つけられるようアドバイスをされています。

 

私が子供の頃、そういった相談所やホットラインがあれば、「死ね!」と命を否定されていじめられていても、何かいい突破口を見つけ出すことができたのでは……と思います。

 

 

でも、私がいたのは小さな町。ばれたらもっと殴られたりいじめられたりすると勝手に信じていたので、やっぱり何も、できなかったかもしれません。話を聞いて下さる大人たちは、いたかもしれないのに気づけませんでした。今まさに苦しんでいる大人も子供も、一歩前に足を出せない立ち往生状態ではないかと思います。

 

 

 

 

私は、法務省の許可を得て、日本で一番大きな女の子の少年院・榛名(はるな)女子学園に一年間毎週通って取材や行事などに参加し、十四歳~二十歳の少女たちに触れ合って来ました。

 

 

「いじめ」は優しい言葉に聞こえますが、実は傷害事件です。私たち大人が考えられないほどの酷いことをして人を傷つけた結果、家庭裁判所の審判を受け、少年院に送られて来たのです。

 

 

たまたまかもしれませんが、私が少年院に通っていた時、その傷害事件を起こした少女たちの約半数がいじめられた経験のある少女たちでした。痛みを知っているのに、人に痛みを与えた。この痛みを人に味わわせてやりたいと思って暴力をふるった生徒もいました。また、ゲーム世代なので、ゲームのように「人は死なない。よみがえる」と本気で信じていた子もいました。

 

少年院は、罪を償う場所でなく更生するための教育機関で、送られてくる少女たちの家族は、特別な家庭や家族構成ではありません。

ただ、親との会話が少なくなり彼女たちの居場所が家になくなってしまっただけ。

 

 

「だけ」とはいえ、これが大変なことで、少女たちが道を間違えたり、苦しみを抱える一番の大きな原因になっているのです。

彼女たちは、私に言いました。

 

「ここ(榛名女子学園)の先生のように、親や先生が私の話をいっぱい聞いてくれていたら、ここに来ることはなかったかもしれない」と。

 

 

「うちの子は大丈夫」と親の目線で考えていると、子供は心配かけまいと、ますます苦しみや悩みを話さなくなります。

今の子供たちは、とっても賢くて、大人に気を遣っています。

 

 

こうして親子間の距離が広がって行くと、子供たちは「家に居場所がない」と、外に居場所を求めるようになります。そこで悪い大人が手ぐすね引いて待っている……。
でも、その人たちは下心があるので、少女たちの話をずーっとお説教しないで聞いてくれるのです。だから少女たちは、悪い大人の言うことを聞き、道から反れて行きます。売春、常習家出、窃盗、詐欺、薬物、傷害、殺人……彼女たちが犯した犯罪はさまざまです。

 

 

世の中、けっして悪い大人ばかりではありません。榛名女子学園では、「この世には、いい大人、いい男の人がいっぱいいる」ということも先生方が行動で教えて行きます。先生方は生徒を褒めることもしますが、直すべきことは何度でも何日でも何ヵ月でも注意をし続けます。それほど真剣に子供と対面しているのです。けっして逃げません。そうして子供たちは「いい大人もいる」ことに気づくのです。

 

 

少女たちが話を聞いてもらいたいと思った時、毎日超多忙なのに先生は話をじっくり聞いてあげます。そのために少年院内には至る所にベンチや椅子が置かれています。

 

 

コロナ禍とスマホなどによって人々はますます便利なこと、早い答を好むようになりました。そうして対面して話をすることを避けるようにもなりました。主に対話するのは、本名も顔も知らないSNS上の友人たちです。

 

 

しかしながら「めんどくさいこと」は、昔からずっと皆さんがやって来たことです。昔から繋いできたことは、やっぱり大事なことなのです。

 

 

私たち大人は、家の中でも社会でも、子供に見られていることを意識して、手本となって行動することが大切ではないかと思います。
「言わなくても判っている」「大丈夫」と、大人たちが受け身では、今の子供たちは心の内をなかなか明かしてはくれません。コロナ禍で失われた会話や思いやりを復活させ、もっともっと増やして行って、手をさしのべ傾聴し、人を助けてあげることが求められていると、私は長年の取材からも思うのです。

 

 

私は、ライターの駆け出しの頃からずっと主にノンフィクション作品を書き続けています。取材した事実しか書けないというジャンルだけに、取材をした人のいわゆる「人生ネタ」を莫大に所有しています。沢山の実話の引き出しから引っぱり出してお話をいたしましょう。

 

 

詳しくは「講演テーマ」をご覧下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『少女は、闇を抜けて
著者:家田荘子
(幻冬舎・2011/04/01)

 

 

 

 

 

『少女犯罪
著者:家田荘子
(ポプラ社新書/アドレナライズ・2015/11/02)

 

 

家田荘子(いえだしょうこ)
家田荘子(いえだしょうこ)
作家/高野山真言宗僧侶

女優、OLなど十以上の職歴を経て作家に。1991年、『私を抱いてそしてキスして―エイズ患者と過した一年の壮絶記録』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2007年、高野山大学にて伝法(でんぽう)灌頂(かんじょう)を受け、僧侶に。住職の資格を持つ。高野山の奥の院、または総本山金剛峯寺にて駐在(不定期)し、法話を行っている。セカンドチャンスや人生探究など、元気の出る対談をYouTube「家田荘子ちゃんねる」にて配信中。

 

 

 

 

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