大切な命を守る企業防災・組織防災・企業のあり方
1. はじめに
企業における防災対策は、単なる災害への備え以上の意味を持ちます。
特に日本のように自然災害が頻発する国において、企業防災は「命を守る」ことを第一に考えるべき重要な課題です。
東日本大震災をはじめ、過去の多くの事例が示すように、災害発生時には迅速で的確な対応が求められ、企業の対応一つで多くの命が救われるかどうかが左右されます。
2. 防災は「事前の備え」が肝心
「安全は目には見えないが、事前の備えこそが命を守る」といった考え方が重要です。東日本大震災の女川支店のケースでは、わずかな判断の誤りが大きな悲劇を招きました。避難先の選定や津波のリスクを十分に考慮せず、結果として多くの行員が犠牲になったこの事例は、事前の防災計画とその徹底がいかに重要かを私たちに教えてくれます。
特に企業においては、災害発生時に従業員の命を守るための訓練と事前対策が不可欠です。
安全対策に終わりはなく、絶え間ない見直しと改善が必要です。
企業は「正解は作り出すもの」という意識を持ち、状況に応じた最善の策を常に模索し続けるべきです。
3. 組織の柔軟な風土が危機を乗り越える
防災においては、企業や組織の風土が大きな影響を与えます。
例えば、危機的な状況において「自分の意見をしっかり伝える力」や「同調圧力からの解放」が重要になります。
組織内の風通しの良さが、危機時の迅速かつ適切な行動に繋がります。
これは、東日本大震災における女川支店の事例でも見られたように、上司の指示が適切でなかった場合でも、部下が自主的に避難行動をとることができれば、多くの命を救うことができたかもしれません。
企業や組織は、「柔軟な環境作り」を目指し、従業員一人ひとりが自己の判断で最善の行動を取れるような風土を築くことが重要です。
命を守るためには、組織全体が一丸となって柔軟な対応ができる体制を整える必要があります。
4. 命を守るための「つながり」
災害時において、命を守るためには「つながり」が大きな力を発揮します。
企業と地域社会、または従業員同士の信頼関係が築かれていることで、迅速な情報共有や適切な対応が可能となります。
たとえば、地域の防災訓練に積極的に参加することで、企業は地域と連携した防災体制を構築することができます。
「つながりは財産」という言葉通り、日常的な連携が災害発生時には大きな力となります。
企業は、地域社会との強固なネットワークを築き、災害時の復旧支援や防災活動においても積極的に貢献できる体制を整えるべきです。
5. 企業防災に求められる具体的な取り組み
企業防災を実現するためには、いくつかの具体的な取り組みが必要です。まず、定期的な防災訓練が重要です。
企業内での避難訓練や非常時の対応策をシミュレーションすることで、災害発生時の初動対応能力を高めることができます。
加えて、AEDや救命訓練を行うことで、万が一の際に命を救うスキルを全社員が身につけることも重要です。
さらに、企業が防災計画を策定する際には、地域の災害リスクを十分に考慮する必要があります。
地震や津波、豪雨など、地域ごとの災害リスクを踏まえた避難計画や設備の設置が求められます。
津波避難シェルターや高台への避難路の確保、または自家発電装置の設置など、ハード面の充実が命を守る鍵となります。
6. 企業の社会的責任
企業は、従業員の安全を守るだけでなく、地域社会に対しても責任を果たすべき存在です。
大規模災害時には、地域の防災活動に積極的に貢献し、被災地の復興支援を行うことが求められます。
また、企業は防災に関する情報を積極的に公開し、地域社会と連携して防災対策を進めていくことが求められます。
地域の防災訓練や災害支援活動に参加することで、地域の防災力を向上させるだけでなく、企業の信頼性や社会的な価値を高めることができます。
7. まとめ
「命を守る」企業防災は、日々の備えと柔軟な風土作り、そして地域との連携が鍵を握ります。
企業は、自らの防災対策を見直し、従業員や地域社会と共に安全を築き上げていく必要があります。
防災は終わりなき挑戦です。過去の教訓を学び、未来に向けた備えを怠らず、命を第一に考える企業文化を育てていくことが求められています。
1960年宮城県生。1981年三菱電機(家電)入社 2011年東日本大震災により宮城県女川町で、銀行企業管理下での息子の死を機に、息子のいのちを生かし続けるために震災伝承活動や企業・組織防災講演や小中高での講話などに取り組む。
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