日本大学教授・水野和夫氏の著書『資本主義の終焉と歴史の危機』。
昨年3月に発売され、経済書としては異例の30万部に及ぶベストセラーとなっています。
ピケティによる格差拡大の警鐘とあいまって、今や水野和夫氏には講演依頼も
多数寄せられていると思います。
同書は佐藤優氏、榊原英資氏、田原総一朗氏、養老孟司氏などなど、
そうそうたる識者の方々が推薦文を寄せる話題の一冊。
序文の書き出しに「資本主義の死期が近づいているのではないか」とあるとおり、
近代を支えてきた資本主義というシステムが終焉に向かえつつあるこの大転換期に、
日本が何をなすべきか?が説かれています。
その重要な切り口となるのが、「利子率の低下」。
利子率が低下しているということは、資本を投資しても利潤が生まれない事態を意味しており、
設備投資をしても市場がすでに飽和していて(過剰供給)、十分な利潤を生みません。
かつて、16世紀末~17世紀初頭のイタリア・ジェノヴァでも起こったように、
利子率が2%以下と極めて低い状態が長く続いてしまえば、既存の経済・社会システムは
もはや維持できなくなります。
そして、先進各国の国債利回りが際立って低下する昨今、その先鞭をつけたのが日本でした。
日本では1997年から利子率が2%を下回り、2014年1月時点では0.62%です。
水野氏は「デフレも超金利も経済低迷の元凶だと考えていません。両者のどちらも資本主義が
成熟を迎えた証拠ですから、『退治』すべきものではなく、新たな経済システムを
構築するための与件として考えなければならないものです」としたうえで、
「長らくゼロ金利が続いている日本は、おそらくもっとも早く資本主義の卒業資格を手にしている」
と述べています。
水野氏が「資本主義の卒業証書」とあえてポジティブに語るのは、現在のグローバル資本主義は
絶えず中心と周縁を生み出し、周縁からの搾取によって中心が潤う仕組みなっているから。
資本主義という全体の15%のみが富む仕組みの中で格差は拡大を続けており、
もはや民主主義を破壊しようとしています。
これまでのように成長路線を追求するのではなく、景気優先の成長主義から抜け出して、
脱成長の新しいシステムを構築すること。
詳細は同書に譲りますが、まずは現状維持のゼロ成長社会(定常状態)を目指すべきだとして、
「脱成長」という「成長」を説く水野氏の論は、ピケティが実証した格差拡大の潮流と併せて、
広く読まれるべきものだと思います。
水野氏は量的緩和によるデフレ脱却に懐疑的ですが、混迷を極める日本の経済動向に対し、
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