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女子高生の奇跡的なサクセスストーリーを描いた実話『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA刊、以下『ビリギャル』)は、2015年1月で65万部のベストセラーとなる。
そして、映画『ビリギャル』(主演:有村架純)として映画化され、同年5月1日全国ロードショーとなり、再び大きな感動をよぶことに。
その著者・原作者である坪田氏は、主人公を指導した塾講師、塾長であり、さらにIT企業など複数社を創業した起業家の顔を持つ異色の経営者である。
教育界のみならず、多くの企業関係者や子育てに携わる親たちが、坪田氏の人材育成ノウハウを知りたいと熱い視線を注いでいる。
(text:増田聖祥、photo:吉田将史)
坪田信貴:現在、講演依頼は月50本ほどお寄せいただいております。本業である生徒指導に影響が出ないように、平均月6本の講演を実施しています。大手OA機器商社や生命保険会社をはじめ、金融機関でも講演しています。
坪田信貴:学校教育の目的は、社会に出る前に子どもに自信をつけさせることです。自信がないまま社会に出して、学校教育が終わるのは明らかにおかしい。もうひとつは、居場所をつくってあげること。それは、学校や家庭で、教師・生徒、親子の関係性でつくられるものです。
これらは、会社でもいえることです。部下に自信が持てるような段階的な課題を組んで、自信をつけさせ、居場所を確保できるようにしていくことが、上司の役割であり、教育の役割なんです。
生徒や部下が「自分はダメ人間だ」と決め付けた、自信をなくした、なくしたままであれば意味がない。本来なら、成長の事実を認めそれをコメントし、自信と居場所を確保すべきなのに、本人が「ダメ人間」を認識したままというのは、明らかに指導者がおかしいんです。
さらに、指導者側が「お前はダメ人間だ」とレッテルを貼ったら、それはもう教育の放棄です。その状況を変えていくのが指導者の役割であるのに、それを果たしていない証拠です。
坪田信貴:大事なことは、部下を「ダメなやつだ」と思わなければいいんです。思わなければ、ダメな指導者ではなくなる。
完璧な人間などはおらず、指導者でも失敗するのは当たり前です。ミスや欠点を踏まえて、実績や長所を認める。良いところは必ずあるはずです。そこにフォーカスすることが指導者の本質的な役割です。
坪田信貴:「してあげる」という、上からの意識ではないんです。私の場合、誰とでも対等です。
私の塾の講師のみなさんは、私よりも年長者が大半です。しかし、彼らは私をリスペクトしてくれるし、私もみなさんを尊敬している。「指導」というのは、あくまで教育手法を表した言葉に過ぎず、私に講師としての一日の長があるため、そのテクニックを伝え、説明しているだけなんです。
坪田信貴:そうです。塾長も講師も生徒も、受験をともに戦い抜いてきた「戦友」です。その中で、私は指導者という「役割」を演じているに過ぎない。軍隊でも、連隊長や部隊長はそれだけで“偉い”わけではありません。将校も二等兵も、その肩書きは「役割」に過ぎないのです。
坪田信貴:慶応を薦めたのは私自身ですし(笑)、塾生の15%が中学高校において“学年ビリ経験者”ですから、さやかちゃんの慶応合格は決してレアケースではないんです。
また、東京大学や医学部に合格しているケースもたくさんあるので、「慶応合格は不可能ではない」と率直に思っていました。
坪田信貴:日本史でも、偏差値は60に到達していたので、明治大学と関西学院大学は、ちゃんと合格しています。慶応の文学部受験時はたまたま腹痛を起こしてしまい、実力を発揮できなかったようですが、同学部の過去問題を解いても合格ラインに乗っているんです。
坪田信貴:受験指導の専門家の立場で言えば、受験はけっして超えられない壁ではないんです。その理由は、出題される問題には答えが必ずあるからです。答えがあるのならば、その解法も必ずある。ですから、ピッチを刻んで勉強すれば必ず結果が出る。才能の問題ではないんです。
人生における様々な問題には、必ずしも答えがあるとは限りません。しかし、高校までの勉強には必ず答えが用意されています。そして、成績が伸びないと思った時点から伸びない(笑)できないと先入観を持った時点で何もできなくなってしまうんです。
坪田信貴:例えば、東大の医学部を目指すにしても、数学の問題でも2500パターンしかありません。それを多いと思うか少ないと思うかという話だけなんです。高校3年間でクリアするのであれば、1日2問ずつ解けばよい。
坪田信貴:確かに。日々コツコツ積み重ね、わからないことがあれば振り返って確認し、途中でくじけそうになっても乗り越え、仲間の励ましにも救われて、最後には大きな成果を得ることができました。この経験は、むしろ社会に出てから必要となることだと思うんです。
無理だ、前例がないといわれたことにチャレンジするときに、慶応義塾大学合格の経験が生かされると思います。それが自信なんですね。
坪田信貴:確かに愛情もありますが、マザー・テレサやマハトマ・ガンジーのような博愛主義者ではないので、苦手な人もいます(笑)。しかしそれ以前に、人間に対する興味が人一倍ありますね。つまり、人間に対する客観的な興味が強いんです。
これは、私が大学時代に心理学を専攻した動機でもあるんですが、人が好きというよりも「人の存在が好き」なんですね。
これまでに、1300組に及ぶ親子と接してきました。そこで分かるのは、親御さんは実に大事にお子さんを育てている。また、彼らは社会によっても育てられています。
その積み重ねの上にいまの自分があるわけですから、そうした「人」をちょっとした感情で好き嫌いになるのではなく、その人の存在を受け入れているのです。
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